
山川に 風のかけたる しがらみは
流れもあへぬ 紅葉なりけり
Reading
Yamakawa ni Kaze no kake taru Shigarami wa
Nagare mo ae nu Momiji nari keri
和歌の意味
山道を歩いていると、風で散った紅葉が川の上にたくさん浮いている。まるで風がしがらみをかけたみたいだ。
Meaning
The weir built in a mountain stream by the wind was maple leaves, staying not flowing away.
鑑賞
秋の山道、川面に風で散った紅葉が浮かび所々で固まって留まっている。これを風が、柵(しがらみ)を架けてせき止めているとする擬人法である。晩秋の谷川の美しい風景である。
「滋賀の山越えにて詠める」という詞書きがあるので、京都から、近江の滋賀へ抜ける山道という事である。この山道は多くの人が志賀寺へ参るために行き来し、結構にぎわったという事だ。
昔の人々はこういう山道を歩いて旅をしたのだと思いをはせる。
春道列樹の詳しい経歴はわからない。和歌を多く残したという人ではない。その中でこの句が百人一首に選ばれて、後世に名を残したということは幸運だという事だ。