
あはれとも いふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
Reading
Aware to mo Iu beki hito wa Omooe de
Mi no itazurani Nari nu beki kana
和歌の意味
私のことを哀れだと言ってくれそうな人は、思い浮かばないことだ。私はこのまま空しく死んでいくのだろうか。報われないままに。
Meaning
I don't think anyone would feel pity for my lost love, so I will have to die in vain.
鑑賞
詞書に、「愛し合っていた女が、しばらくして冷たくなり、そのうち逢ってもくれなくなったので詠んだ歌」とある。
相手の女に、せめて「あはれ」と言って欲しいと恋焦がれている。失恋の悲しみに嘆いている男の歌である。
謙徳公とは藤原伊尹(これまさ)の事、謙徳公というのは亡くなってからの諡(おくりな)である。
諡とは、高貴な人の死後の名前である。
伊尹は大貴族の家の出身で、「和歌所」の別当として、万葉集の編纂事業などを監督し、後には摂政となった。
歌人としても有名だった。