
君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
Reading
Kimi ga tame Oshikara zari shi Inochi sae
Nagaku mo gana to Omoi keru kana
和歌の意味
あなたの為ならば、命を捨てて惜しくはないと思っていたが、あなたとの恋がかなった今となったら、少しでも長く生きたい、あなたと逢っていたいと思うようになった事よ。
Meaning
I didn't afraid of giving my life to see you, but now I would like to live longer to see you.
鑑賞
これは後朝の歌である。逢瀬の願いが初めてかない、恋の喜びに満たされている若者の歌である。恋がかなった今では、この恋の為に少しでも長く生きたい、という心の変化が初々しく歌われている。
藤原義孝は、45番謙徳公・藤原伊尹(これまさ)の三男。藤原行成(能筆家)の父 義孝は藤原家の御曹司で、美男子で、和歌の才能も有り、人気があったらしい。
当時天然痘が広がり、「藤原家は、朝に兄が亡くなり、夕には弟が亡くなった。一日に二人の息子を亡くした母親の悲しみはいかばかりだったか」と「大鏡」に書かれている。