
明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき 朝ぼらけかな
Reading
Ake nure ba Kururu mono to wa Shiri nagara
Nao urameshiki Asaborake kana
和歌の意味
夜が明けると、また日は暮れて、あなたにまた逢えると分かってはいるが、夜が明ければ帰らなければならないこの身。恨めしい夜明けだなあ。
Meaning
I know it goes dark and I can see you again, still, I can't help feeling sorry when the day breaks.
鑑賞
平安時代は男性が女性の家に通う結婚が一般的であった。そのため夜明けには、男性は自分の家に帰らなければならない、家に帰った後、男性から女性に手紙や和歌を送るという風習があった。これを後朝(きぬぎぬ)の歌という。この歌は後朝の歌のお手本ともいえる歌である。詞書に「雪の降る朝に詠んだ歌」とある。夜明け、雪の降る中を徒歩で帰ったのだ。
藤原道信は、貴公子で和歌も上手く、人柄も愛されたが、23才の若さで疫病の為に亡くなった。当時、疱瘡(天然痘)が流行し、貴族達も次々亡くなった時代である。