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滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
Reading
Taki no oto wa Tae te hisashiku Nari nure do
Na koso nagare te Nao kikoe kere
和歌の意味
この滝壺は、今は枯れてしまって、長い年月水の音も絶えてしまった。しかし嵯峨の有名な滝として名声だけは伝わっている。今でもその滝の音がきこえてくる様だ。
Meaning
Though it has passed long since the waterfall lost the water and the sound, only the name has been known and is heard even now.
鑑賞
公任が嵯峨の大覚寺を訪れ時に詠んだ歌。
大覚寺には、広大な庭に滝殿があり有名であった。
多くの人がその滝を見物に行ったが、公任の時代にはその滝は枯れてしまっていたという事だ。
後世この滝は「名こその滝」と呼ばれるようになった。
タとナの音の繰り返しが、印象的な歌である。
藤原公任は漢詩文、和歌、管弦に優れ、「三船(さんせん)の才」と言われた。道長と同時代に活躍し、王朝貴族の一人だった。
「紫式部日記」には、紫式部が中宮彰子に仕えていた頃、ある催し事で、「この辺りに若紫はいらっしゃいませんか」と声かけたと記されている。