
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
Reading
Haru no yo no Yume bakari naru Tamakura ni
Kainaku tatamu Na koso oshikere
和歌の意味
春の短い合夜、夢の湯女お戯れ、あなたが出した手枕をお借りしたら、甲斐もなく浮名が立ってしまいますよ。冗談を言わないでくださいね。
Meaning
How much I regret that we'll be gossiped about romance worthlessly* just because of such a transitory pillow of my head on your arm as anight dream in !
鑑賞
「千載集」の詞書に、この歌が詠まれた状況が書かれている。
春の夜、二条院の屋敷で女房達が集まって、夜通し語り明かしていた、周防内侍が、ふと横になろうとして、「枕が欲しいわ」とつぶやいたところ、ある公達が「これを枕に」と言って、御簾の下から、ぬっと自分の腕を差し入れた。そこで周防内侍がとっさに「あなた腕枕を借りたら、甲斐もなく浮名がパッと立ってしまいます。それは惜しいことですわ」と即妙にこの歌を詠んだ。腕の「かいな」と「かいなく」の掛詞を使って楽しくやり返した。当時の宮廷生活がしのばれる。
周防内侍は周防守・平の棟仲の女(むすめ)
後冷泉天皇以降四代の天皇に女房として仕えた。
才媛で、三六歌仙簿一人である。