
音に聞く 高師の浜の あだ波は
かけじや袖の 濡れもこそすれ
Reading
Oto ni kiku Takashi no hama no Adanami wa
Kakeji ya sode no Nure mo koso sure
和歌の意味
評判の高い高師の浜の空しく寄せる波には、かかるまい。袖が濡れると大変ですから。―――噂に高い浮気なあなたのお言葉は、心にかけたりしませんわ。後で涙で袖を濡らすことになるのは嫌ですからね。
Meaning
I'll be careful not to take the famous waves(= your flirtation) on Takashi Beach, otherwise I'll get my sleeves wet (with tears).
鑑賞
詞書によると「堀河院艶書合(けそうぶにあわせ)」で詠まれた歌である。これは公卿達や女房達がついになって、お互いに恋の歌を詠んで、返歌を返すという歌合せ。
この時、対になった藤原俊忠の増歌は「人知れぬ 思ひありその 浦風に 波の寄るこそ 言わほしけれ」であった。これに対し、歌枕や掛詞、縁語を巧みに使い、見事に応じている。俊忠か29才、紀伊は70才前後だったという。貴族達が、歌合せで才能を競いあった優雅な一場面である。
紀伊は兄が守(かみ)であったので紀伊と呼ばれた。
後朱雀天皇の第一皇女祐子内親王に仕えた。