
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき 独りかも寝む
Reading
Kirigirisu Naku ya shimoyo no Samushiro ni
Koromo katashiki Hitori ka mo ne mu
和歌の意味
きりぎりすが鳴いている霜が降りる寒い夜。粗末なむしろの上に自分の着物の片袖を敷いて、ひとり淋しく寝るのだろうか。
Meaning
How lonely I am to sleep clothed alone with my head on my own arm, on a cold straw mat on such a frosted night, when grasshoppers are chirping.
鑑賞
この歌は3番の柿本人麻呂の歌
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」
の本歌取りである。本歌をふまえて詠むと一層、この歌の趣きが増す。
愛する人と逢えぬ淋しさ、秋の夜の孤独な一人寝の淋しさが、更に味わい深い歌になっている。
「キリギリス」は今のコオロギのこと。
この長い名前の作者は、藤原良経のこと。関白太政大臣藤原兼実の息子。若くして太政大臣になった。
藤原俊成に和歌を学んだ。「新古今集」の撰者。